COLUMN

特定整備記録簿は、自動車特定整備事業者が実施した特定整備の内容を残す帳簿です。
作業を記録するだけでなく、使用者への写しの交付と、記載した日から2年間の保存までが必要になります。
エーミングを外注する場合は、依頼前に作業範囲と記録の担当を決めます。一部外注・全部外注・構内外注では記載方法が異なり、外注先から受け取る書類も変わるためです。
この記事では、整備工場の経営者・整備主任者・フロント担当者に向けて、必要な記載事項、外注時の記録、電子保存の考え方と、納車までに確認する手順を説明します。
制度の確認時点は2026年10月18日です。

特定整備には、従来の分解整備に加えて、一定のカメラ・レーダーなどの調整や脱着に関わる電子制御装置整備が含まれます。
特定整備事業者が該当する作業を行った場合に、その内容を記録します。
電子制御装置整備に該当するかは、対象車両・対象装置と実施する作業を組み合わせて判断します。
メーカーが公表する対象車両情報と整備要領を照合し、受付の時点で記録簿の作成が必要な作業を把握しておくと、納車直前の記入漏れを減らせます。
似た名称でも、記録する目的と義務を負う人は異なります。
| 書類 | 主に記録する内容 | 制度上の位置づけ |
|---|---|---|
| 特定整備記録簿 | 実施した特定整備の概要など | 特定整備事業者が作成・保存し、使用者へ写しを交付 |
| 点検整備記録簿 | 定期点検の結果と整備の概要など | 使用者の記録。整備工場が依頼を受けて作成する場合もある |
| 指定整備記録簿 | 指定整備・完成検査に関する事項 | 指定整備事業者が作成・保存する記録 |
点検整備記録簿と特定整備記録簿を兼用する様式でも、特定整備の記載事項、写しの交付、工場側の2年間保存に対応する必要があります。受付時に使用する帳票を決め、必要な欄が足りなければ補完する方法を確認してください。
出典:国土交通省 記録簿の電磁的方法による作成・保存・交付の取扱い

道路運送車両法第91条と同法施行規則第62条の2では、車両を特定する情報、作業の概要、完了日、依頼者の情報などを定めています。
受付情報だけでは埋まらない欄があるため、受付時と作業完了時に分けて確認すると運用しやすくなります。
| 記載事項 | 記入・確認のポイント |
|---|---|
| 自動車登録番号・車両番号・車台番号 | 登録自動車は自動車登録番号、車両番号の指定を受けた車は車両番号、それ以外は車台番号を記載 |
| 特定整備の概要 | どの部位に何を行ったかが分かる内容にする |
| 特定整備を完了した年月日 | 請求日や納車予定日で代用せず、作業の完了日を確認 |
| 依頼者の氏名または名称・住所 | 法人名、担当者名、使用者名を混同しない |
| 特定整備時の総走行距離 | 入庫車両の実際の表示を確認 |
| 整備主任者の氏名 | 作業担当者名だけで置き換えない |
| 特定整備事業者の氏名または名称 | 作業を行った事業者の情報を記載 |
| 事業場の所在地・認証番号 | 本社情報ではなく、該当する事業場の情報を確認 |
特定整備の概要欄には、実際に完了した作業を記入します。
見積り後に追加・変更した作業も反映してください。運用上は、作業完了時に記録し、納車時に写しの交付を確認する担当を決めておくと、後日のまとめ書きによる記入漏れを防ぎやすくなります。
例えば、当初はセンサー交換を予定していたものの、点検後に別の修理方法へ変更したなら、実際の作業内容で記録します。
反対に、見積り段階で含めていなかった調整を追加した場合は、追加した作業が記録から抜けていないか確認します。
社内では「見積りの予定」「作業指示」「完了した作業」を区別し、整備主任者が完了内容を確認してから帳簿を確定する流れを決めておくと、書類ごとの不一致を見つけやすくなります。
次は記載内容を考えるための説明例です。
正式な記録簿では、採用する様式の記号・記載要領に従い、ほかの必要事項も記入してください。
| 作業の状況 | 特定整備の概要欄に残す内容の例 |
|---|---|
| 自社でレーダー交換と調整を実施 | レーダー交換、エーミング実施 |
| 自社でレーダー交換、調整を他工場へ外注 | レーダー交換、エーミングを外注した旨 |
| ガラス交換を構内外注し、自社で調整 | ガラス交換を構内外注した旨、エーミング実施 |
概要欄では、対象装置と作業内容、外注した範囲を具体的に記録します。参照した整備要領、作業前後の診断結果、写真などは、必要に応じて補足資料として保存してください。
記録簿と補足資料に共通の入庫管理番号を付けると、後日、実施内容を照合しやすくなります。

次の区分では、電子制御装置整備の作業範囲と管理責任を基準に、記録する事業者を整理します。
例えば、自社でレーダーを交換し、別の認証工場でエーミングを行う場合です。
国交省の記載例では、外注元は自ら実施した交換とエーミングを外注した旨を記載し、外注先は自ら実施したエーミングを記録します。
外注元・外注先それぞれの実施内容を記録した写しを、使用者へ交付します。外注先の写しは外注元が受け取り、使用者へ渡す方法もあります。
フロント担当者は、作業結果の連絡だけで完了扱いにせず、必要書類の受領と交付を入庫案件の管理項目に入れておくとよいでしょう。
電子制御装置整備の全部を外注した場合、国交省の記載例では、外注元はその電子制御装置整備を自社の特定整備記録簿に記載しない扱いです。
外注先が実施内容を記録し、外注元を経由するなどして使用者へ写しを交付します。
外注元が別途、分解整備を実施した場合は、その自社作業も記録して写しを交付します。
なお、ここでいう全部外注の扱いを、指定工場が保安基準適合証を交付する作業へそのまま当てはめることはできません。
指定工場の電子制御装置整備は、後述する一部外注等の条件に沿って管理します。
構内外注は、電子制御装置整備の認証を受けた外注元が、自らの管理と責任の下で外部業者に作業させる形です。
書面には、外注元と作業する業者の名称、作業内容、外注元が管理する旨を明記します。例えば、外部のガラス業者が外注元の事業場で交換し、外注元がエーミングを行う場合、特定整備記録簿は外注元が記載します。
受付時には、作業する人が外部業者というだけで分類せず、作業場所、管理する事業者、委託する作業を確認します。
依頼書と記録簿で外注の扱いをそろえておくと、納車時に誰の記録が必要かを判断しやすくなります。
出典:国土交通省 特定整備記録簿の記載方法、特定整備制度に関するよくある質問・問答
指定工場では、外注先の作業実施書等と特定整備記録簿を受け取り、現車で作業のできばえを確認します。
そのうえで、外注先の名称、外注内容、作業完了日、できばえ確認の実施状況を指定整備記録簿へ記載します。
外注先が作成した特定整備記録簿の写しは使用者へ交付します。
特定整備記録簿の受領と、指定工場側の確認・記録は、それぞれ担当者を決めて実施してください。
出典:国土交通省 電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習テキスト 35頁

特定整備記録簿の保存期間は、記載した日から2年間です。
工場での保存に加え、使用者への写しの交付も必要になります。交付日・交付方法を社内の管理項目にすると、渡し忘れを確認しやすくなります。
紙で運用する場合は、記載日と車両番号などから探せる保管方法を決めます。
外注先から受け取った書類、診断結果、写真などの関連資料にも同じ入庫管理番号を付ければ、問い合わせを受けた際の照合作業を減らせます。
書類を処分する時期は、帳簿の種類ごとに管理してください。税務書類や契約書などを一緒に保管していても、それらすべての保存期間が2年間になるわけではありません。

国交省は、記録簿を電子データで作成・保存・交付する場合の取扱いを示しています。
電子化を進める際は、「データを置く場所」と「使用者へ渡す方法」の両方を設計します。
電子保存では、記録を直ちに明瞭に表示し、書面として出力できることなどが求められます。
あわせてガイドラインは、検索、データ移行、操作履歴、改ざん防止、バックアップなどを示しています。
導入時には、保存データの検索と印刷を試します。あわせて、担当者の退職時の権限引き継ぎ、サービス解約時のデータ出力方法、バックアップの保存先を決めてください。
特定整備記録簿の写しを電子交付する場合は、あらかじめ交付方法を示し、書面または電磁的方法で使用者の承諾を得る必要があります。
使用者が受け取った電子データから書面を出力できることも必要です。受取先とダウンロード・印刷方法を案内します。
受付時に交付方法と受取先を確認し、承諾を得た記録を残します。
承諾が得られない場合や、後から承諾を撤回された場合は、電子交付をせず書面で交付してください。
工場内で電子保存を続けることと、使用者へ紙で交付することは両立します。
出典:国土交通省 記録簿の電磁的方法による作成・保存・交付の取扱い

受付・整備・確認・交付・保存の各段階で、担当者と確認する書類を決めます。次は工場内での分担例です。
・受付担当者が車両情報・依頼者情報・交付方法を確認する。
・整備担当者が実施作業と変更内容、外注範囲を作業報告に残す。
・整備主任者が完了した作業と記録内容を照合する。
・納車担当者が必要な写しの交付を確認する。
・管理担当者が記録簿と関連資料の保存先を確認する。
特に見直したいのは、追加整備と外注戻りのタイミングです。
予定を変更した作業が帳簿へ反映されたか、外注先の書類がそろったかを納車確認の項目に加えます。
請求書の発行完了と記録簿の交付完了は、分けて管理してください。
鈑金・事故車修理では、見積り、作業指示、写真、特定整備記録簿の内容を同じ案件として確認できることが役立ちます。
株式会社トランターが取り扱う事故車修理費見積りシステム「コグニセブン」は、見積書の作成、見積りに関連する画像の保存に対応しています。
記録簿の作成・管理には、整備管理ソフト「ドリームパワー」もご検討ください。
点検整備記録簿の作成・印刷は標準プランの機能です。
特定整備記録簿として使う際は、必要な記載事項を満たす様式かを確認してください。
ドリームパワーの製品情報で機能をご確認いただけます。
事故車修理の見積り業務を見直したい方は、コグニセブンの製品情報をご覧ください。

法定記載事項を満たしていれば、特定の市販商品を購入することが条件ではありません。
国交省が公開している特定整備記録簿の記載例は、様式を選ぶ際の参考になります。地域の自動車整備振興会が提供する帳票も確認できます。
点検整備記録簿との兼用様式も、必要な欄の有無を確認して使用してください。
代用できるかは、法定記載事項がすべてそろっているかで判断します。
エーミングの結果だけを示すレポートでは、依頼者情報、整備主任者名、事業場所在地・認証番号などが不足する場合があります。
不足する場合は特定整備記録簿を作成し、結果レポートを補足資料として関連づけて管理します。
訪問特定整備等では、通常の項目に加えて、訪問特定整備・限定訪問特定整備の区分、実施場所の住所または所在地、作業した訪問特定整備士等の氏名を記録します。
実施場所が他の事業場なら、その名称と認証番号も必要です。欄が足りない場合は、追加事項を記載した別紙・電子データを記録簿とともに保存できます。
訪問特定整備制度による作業か、外注元の管理下で行う構内外注かで取扱いが異なるため、出張してきた業者という理由だけで同じ記録方法にしないでください。
見積書は予定作業や金額を示す書類であり、それだけで記録簿の代わりになるとはいえません。
作業報告やバックアップなどから実施内容を確認し、管轄の運輸支局等へ対応を相談してください。確認できない作業を推測で書き足すことは避けます。

特定整備記録簿では、必要事項を記載し、使用者へ写しを交付して、記載日から2年間保存する流れを確実に運用します。
エーミングを外注する場合は、一部外注・全部外注・構内外注を区別し、誰が何を記録するかを作業前に決めてください。
作業変更があったときは、見積書・作業指示書・完了報告を照合してから記録簿を確定します。 記録簿の作成・管理を支援するドリームパワー(記録簿機能は標準プラン)や、 事故車修理の見積りを支援するコグニセブンの導入については、 トランターへお問い合わせください |