COLUMN

指定工場になるには、自動車特定整備事業の認証を受けたうえで、人員・資格、検査設備、技術・管理組織の基準を満たし、地方運輸局長の指定を受けます。
大型車を扱わない一般的な工場では、工員4人以上、整備士2人以上かつ工員の3分の1以上、自動車検査員の選任が主な人員条件です。
指定を受けると、点検整備後の完成検査に基づいて保安基準適合証を交付でき、継続検査などで国の検査場への現車提示を省略できるようになります。
一方、検査を担う体制は指定を受けた後も維持しなければなりません。
この記事では、指定工場を目指す整備工場の経営者に向けて、申請前に確認する条件と準備の順番を説明します。主に一般的な小型車・普通乗用車を扱う工場を想定し、大型車の条件は分けて記載します。
制度の確認時点は2026年10月18日です。

最初に、現在の認証内容と、指定取得後に扱いたい車両・業務を並べます。そのうえで不足する人員や設備を確認すると、採用・工事・申請の順番を決めやすくなります。
| 確認する分野 | 主な条件・準備 |
|---|---|
| 認証 | 分解整備と電子制御装置整備の両方の認証を受け、申請する車両・作業の範囲を満たす |
| 人員 | 原則として工員4人以上、整備士2人以上かつ3分の1以上。検査員等の役職を配置。大型車は後述の別条件 |
| 事業場 | 作業場、車両置場、完成検査場などが対象車両の基準に適合する |
| 機器 | 整備用の機器に加え、必要な検査機器を備える |
| 技術・管理組織 | 点検整備、検査、記録、機器管理などを適切に行う体制がある |
| 申請・審査 | 管轄の運輸支局へ申請し、審査を受ける |
各条件を同時に確認し、採用・資格取得・設備工事のうち、準備に時間がかかるものから着手します。

認証は、対象となる特定整備を事業として行うための制度です。指定は、その認証を受けた事業場のうち、追加の基準を満たした事業場が受けるものです。
| 比較項目 | 認証工場 | 指定工場 |
|---|---|---|
| 特定整備の実施 | 認証された範囲で実施 | 認証された範囲で実施 |
| 完成検査に基づく保安基準適合証の交付 | 認証だけではできない | 指定された範囲でできる |
| 車検時の現車提示 | 持込検査などで対応 | 保安基準適合証の提出により省略できる |
| 主な体制 | 整備主任者、対象作業の人員・設備 | 左記に加え、自動車検査員、検査設備、管理体制など |
「民間車検場」という呼び方は、一般に指定工場を指します。ただし、指定を受ければすべての車種・装置を扱えるわけではありません。自社が認証・指定を受けている範囲に沿って業務を行います。
開業から認証取得までの全体像を整理したい方は、自動車整備工場の開業完全ガイドもご覧ください。本記事では、そこから指定取得に向けて追加する条件を中心に扱います。

大型車を対象に含まない工場では、工員4人以上が基本です。
この工員のうち、整備士が2人以上、かつ工員数の3分の1以上を占める必要があります。必要人数は「工員数÷3」の端数を切り上げ、2人を下回らない人数として計算します。
| 工員数 | 必要な整備士数の計算例 |
|---|---|
| 4〜6人 | 2人以上 |
| 7〜9人 | 3人以上 |
| 10〜12人 | 4人以上 |
これは人数と割合だけの計算例です。
関東運輸局の基準表では、この整備士数に自動車タイヤ整備士・自動車電気装置整備士・自動車車体整備士を含めないと注記しています。
担当者の資格区分を確認したうえで数えます。
工員数は事業場ごとに確認します。名簿には、整備や検査に従事する人の担当業務と資格を記載し、受付・営業・事務だけを担当する人を分けて整理します。
例えば工員6人・整備士2人から、整備士資格を持たない人を1人増やすと、工員7人に対して整備士3人以上が必要になります。採用時も人数と資格の割合を再計算します。
出典:国土交通省 指定自動車整備事業制度について、関東運輸局 指定工場の基準
指定工場では、整備を行う体制に加え、完成検査を行う自動車検査員が必要です。
国交省の制度概要では、整備主任者として1年以上、一級自動車整備士の場合は6か月以上の実務経験があり、地方運輸局長が行う教習を修了した者を選任するとされています。
資格証を持っていること、必要な実務経験があること、教習を修了していること、事業場で選任されていることは、それぞれ確認する事項です。
候補者を決めたら、資格、整備主任者としての経験、教習の受講時期、届出に必要な書類を早めに整理します。
人員配置では、自動車検査員に加えて、事業場管理責任者・主任技術者・整備主任者を定めます。関東運輸局の基準表では、それぞれ1人以上が必要です。
役職数をそのまま必要な従業員数に足すのではなく、担当者名・資格・兼務する職務を一覧にして、兼務の可否を管轄支局と確認します。
出典:国土交通省 指定自動車整備事業制度について、関東運輸局 指定工場の基準
車両総重量8トン以上、最大積載量5トン以上、乗車定員30人以上のいずれかに該当する大型車を扱う場合は、工員5人以上が原則です。
2025年7月8日からは、省力化設備・機器、合理的な管理体制、工員の処遇、工員の質について定められた要件を満たす大型車の指定工場で、最低工員数を4人とする取扱いが設けられました。
大型車の工場すべてで無条件に4人へ減らせる改正ではありません。
大型車を対象に含める計画なら、自社が緩和要件に該当するか、どの資料で確認するかを管轄支局と整理したうえで人員計画を立てます。
出典:国土交通省 整備事業規制のアップデート解説、関東運輸局 指定工場の基準

指定工場では、屋内作業場、車両置場、完成検査場などの基準を確認します。
関東運輸局の基準表は「屋内作業場」を「現車作業」と「部品整備」に分けています。
「普通自動車・小型四輪自動車・小型三輪自動車(上三欄以外)」の区分では、現車作業が64㎡以上、部品整備が8㎡以上です。
「上三欄以外」とは、表の上段にある普通自動車(大型)、大型特殊・普通自動車(中型)、普通自動車(小型:貨物・特種用途)の各区分を除く意味です。
完成検査場は屋内に設け、対象車両を検査するのに十分な面積を確保します。
64㎡は屋内作業場全体の面積ではなく、そのうち現車作業に必要な面積です。
部品整備には別に8㎡以上が必要で、完成検査場を含む総面積を示す数値でもありません。屋内作業場は認証工場の屋内作業場と兼用できます。
対象車種によって基準が異なるため、対象区分と現状の平面図を照合してください。
物件を探す際は、延べ床面積だけで判断せず、車両が出入りする幅、検査機器を置く位置、車両を移動する通路まで図面に落とします。
認証工場として使用できる建物でも、完成検査場を追加できるとは限りません。
候補物件や増築計画がある場合は、契約・工事前に、対象車両と配置図を持って相談すると手戻りを減らせます。
建築・土地利用に関する条件も別に確認し、整備事業の指定だけで建物の使用条件まで満たすとは考えないようにします。
整備作業に必要な工具とは別に、検査に必要な機器をそろえます。
代表的なものに、ブレーキテスタ、前照灯試験機、速度計試験機、排出ガス関連の測定機器などがあります。必要な種類・性能は対象車両に応じて確認してください。
導入費を比較する際は、本体価格に加えて、設置工事、電源、校正や保守、操作の習得にかかる費用を見込みます。
中古機器を検討する場合も、現行の検査業務で使える仕様か、保守や部品供給を受けられるかを確認します。
工場内の運用では、機器の管理担当者、日常の点検、校正等の記録、故障時の連絡先を決めておきます。機器の不具合が起きた日に、検査を続けてよいかを担当者の経験だけで判断しない体制が必要です。
出典:国土交通省 指定自動車整備事業制度について、e-Gov法令検索 指定自動車整備事業規則
本記事が想定する小型車・普通乗用車の工場で新たに指定を受ける場合は、分解整備と電子制御装置整備の両方の認証が必要です。
分解整備のみの工場に認められていた新規指定の経過措置は、2024年3月31日で終了しています。
既存の指定工場に対する経過的な取扱いと、新規申請の条件を分けて確認してください。
また、OBD検査の対象車両を検査する場合は、検査用スキャンツール、対応端末、インターネット接続、システム利用登録などを準備します。
エーミングができる機器を持っていることと、OBD検査を実施できることは同じではありません。
出典:国土交通省 電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習テキスト 25〜26頁、特定整備制度に関するよくある質問・問答、NALTEC OBD検査で使用する機器

指定では、優良自動車整備事業者認定規則に定める設備・技術・管理組織の基準も審査されます。
整備から検査までの担当と責任を管理規程に定め、実際の作業記録と一致させることが準備の中心です。
追加整備が発生した際に作業指示を更新する人、整備を行う人、完成検査を行う人を決めます。
国交省の指導要領では、自動車検査員は、自ら検査する車両の整備作業に、軽微なものを除いて従事しない扱いです。検査員の不在日も含め、整備と検査の担当を割り振れる受入台数を計画します。
出典:国土交通省 自動車整備事業の取扱い及び指導要領「自動車検査員の服務」
管理規程には、追加整備の承諾、作業完了の報告、検査結果の記録、記載漏れが見つかった場合の修正手順も定めます。
担当者が交代しても同じ手順で処理できるよう、使う帳票と保存先まで明記してください。

最初に、指定取得後に受けたい車両、現在の認証範囲、人員・資格、検査場の候補位置を整理します。
月間の入庫状況と持込検査にかかる時間も集計すると、設備投資の目的が明確になります。
相談には、対象車両、工場の図面、機器一覧、人員名簿と資格、車種別の整備実績、作業・検査・記録の手順が分かる資料を持参します。
管轄支局では、最新の申請様式、実績を集計する対象期間、必要な添付資料、現地確認の方法、検査員教習の日程を確認します。相談結果をもとに、不足する資料と準備の期限を整理してください。
事前相談の結果をもとに、採用や教習、設備工事、機器の手配、管理規程と帳票の整備を進めます。
申請書を作る担当者と、設備・人員を準備する担当者の間で、申請内容と実際の体制が一致しているかを照合します。
申請先は事業場を管轄する運輸支局です。2026年4月からは、指定自動車整備事業の新規申請もe-Gov電子申請に対応しています。
利用にはGビズIDのプライムまたはメンバーが必要で、申請内容は事前に管轄支局へ相談します。
国交省は申請後の指定決定まで約45日と案内しています。採用・教習・工事などの準備期間や書類補正にかかる期間も考慮して、受入開始日を計画してください。
指定後は、人員、資格者の配置、機器、管理組織を維持します。
退職、異動、設備の入替え、対象業務の変更があった場合に、届出や条件の再確認が必要かを確認する運用も決めます。
指定取得の費用は、現在の設備・人員と、取得後に扱う車両によって変わります。
次の区分で追加費用を見積もり、取得時の資金と、取得後に継続して支払う費用を分けて計画します。
| 費用の区分 | 見積りに含める項目 |
|---|---|
| 初期の設備・工事 | 完成検査場、検査機器、設置・電源・通信工事 |
| 人員・教育 | 採用、資格・教習への対応、操作教育 |
| 継続費用 | 人件費、機器保守、校正、端末・ソフトの維持 |
| 事務・管理 | 帳票、記録保管、車検予約・顧客・請求の管理 |
投資判断では、持込検査の移動時間がどれだけ減るか、その時間を新たな整備へ使えるか、検査員の稼働枠が確保できるかを確認します。
売上が増える見込みだけでなく、追加する固定費を維持できるかまで計画に含めてください。

一般的な指定工場では工員4人以上が基本となるため、一人や二人でそのまま条件を満たすことはできません。
認証の条件と指定の条件を分けて、人員計画を立てます。
認証・指定の対象範囲に沿って対応します。
大型車、電子制御装置整備の対象車、自動運行装置を備える車などは、必要な資格・設備・範囲を個別に確認してください。
人員、資格、管理組織なども審査されます。
機器を発注する前に、管轄支局と指定取得までの準備事項を確認する順序が実務的です。

指定工場への移行では、人員・検査設備に加えて、受付から完成検査、記録、請求までの管理を準備します。
まず現在の認証範囲と不足する条件を整理し、管轄支局への相談後に採用・設備投資を進めてください。
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