COLUMN

「OBD車検」は、車検に追加された「電子装置の検査(OBD検査)」を指して使われる呼び方です。
車載式故障診断装置に記録された情報を読み取り、保安基準に適合しない故障コードである「特定DTC」などを確認します。
国産車は2024年10月1日、輸入車は2025年10月1日から、対象車の車検で実施されています。
指定工場は検査用機器とシステムの利用登録を準備し、認証工場は持込検査前の「OBD確認」を含めた対応方法を決めます。
この記事では、整備工場の経営者・自動車検査員・フロント担当者に向けて、OBD検査の対象、機器の選び方、受付から結果確認までの流れを整理します。
制度・運用情報の確認時点は2026年10月18日です。

OBDは「On-Board Diagnostics」の略で、車載式故障診断装置を指します。
車両が検知した不具合は、DTC(Diagnostic Trouble Code:故障コード)などの形で記録されます。
OBD検査では、検査用スキャンツールを車両へ接続し、NALTEC(自動車技術総合機構)のOBD検査システムを使って判定します。
対象は運転支援装置、自動運転機能、排出ガス関係装置などです。
DTCのうち保安基準に適合しないものとして定められた「特定DTC」等を確認するため、整備用の診断画面に何らかのDTCが出たというだけで、OBD検査の不適合と断定することはできません。
車検では、OBD検査に加えて、ブレーキや灯火類など従来の検査項目も確認します。見積書ではOBD検査を車検整備のどの項目に含めるかを示します。
出典:NALTEC OBD検査について、NALTEC OBD検査開始の案内
OBD点検、故障診断、OBD検査・確認は、目的と対象範囲が異なります。
特に、車検時のOBD検査の対象外であっても、法定点検のOBD点検は必要になる場合があります。受付票と作業指示書でも、どの作業を行うかを区別して記載します。
| 区分 | 目的・内容 | 工場で区別する理由 |
|---|---|---|
| OBD点検 | 定期点検等で電子制御装置の状態を確認 | 点検項目・方法に沿って実施するため |
| 故障診断 | DTCやデータなどから不具合の原因を調べる | 原因の特定と修理方針の判断が必要なため |
| OBD検査 | 車検時に特定DTC等を確認して判定 | 検査用の機器・システム・手順が必要なため |
| OBD確認 | 特定整備事業者が任意で行うOBD検査と同等の確認 | 実施モードや結果の取扱いが異なるため |
整備用の診断機で異常が出なかった場合でも、その機器が対象装置のDTCをすべて読み取れるとは限りません。
普段の診断結果だけで、OBD検査の結果まで推測しない運用にしてください。
出典:国土交通省 OBD検査を実施するにあたって、NALTEC 整備用スキャンツールと検査のDTCに関するFAQ

対象は、次の時期以降の新型車(フルモデルチェンジ車)です。初度登録年月は、型式が新たに指定された時期とは異なるため、年式だけでは判断できません。
| 区分 | 対象車両の基本 | 検査の開始 |
|---|---|---|
| 国産車 | 2021年10月1日以降の新型車 | 2024年10月1日 |
| 輸入車 | 2022年10月1日以降の新型車 | 2025年10月1日 |
二輪車、大型特殊車、被けん引車、並行輸入車、輸入自動車特別取扱制度による車両は対象外です。また、対象車でも、次のいずれかに該当する期間はOBD検査が不要とされています。
例えば、備考欄が「OBD検査対象」であっても、検査する日がこの期間内なら「検査不要」となることがあります。受付では車検証情報を確認し、実施時点の要否をシステムで判定します。
出典:国土交通省 OBD検査の対象車、NALTEC OBD検査について、NALTEC 対象外車等の案内、NALTEC 検査要否と実施手順のポスター
対象車両の車検証情報には「OBD検査対象」などの記載があります。電子車検証の場合は券面だけで判断せず、車検証閲覧アプリ等で確認できる情報も参照します。
予約の段階で、車名、車台番号、型式、初度登録年月など、要否を確認するための情報を受け取る運用にすると、必要機器や入庫枠の準備を早められます。
入庫後は現車と情報を照合し、特定DTC照会アプリで検査の要否を確認します。
車検証の備考表示は「対象車かどうか」、アプリの判定は「今回の検査で実施が必要かどうか」を確認するために使います。
出典:国土交通省 電子車検証特設サイト、NALTEC 検査の実施方法

OBD検査では、検査用として認められたスキャンツールを使用します。すでに保有する整備用スキャンツールが、そのまま検査にも使えるとは限りません。
購入・更新時は、製品名だけでなく、認定された型式、必要なドライバやファームウェア、利用端末との組み合わせを確認します。
認定情報は、OBD検査ポータルから案内されている日本自動車機械工具協会の一覧で確認できます。
機器は、検査専用か、整備にも使える兼用機かを確認します。兼用機を選ぶ場合も、診断・DTC消去・調整のうち、必要な機能と対応車種を個別に照合してください。
検査用としての認定は、すべての修理やエーミングへの対応を保証するものではありません。
出典:NALTEC OBD検査で使用する機器、OBD検査に関連する情報等
特定DTC照会アプリが対応する端末と、インターネット接続が必要です。
Windows版とAndroid版が案内されていますが、対応OSや端末条件は更新されるため、購入前にポータルの動作環境を確認します。
検査を行う位置で、端末のインターネット接続とスキャンツールとの通信を試します。事務所で接続できても検査場で電波が届かない場合があるため、実際に使用する場所で確認してください。
利用開始前に、担当者のログインから検査結果の確認までを試します。
機器の充電・保管・更新を担当する人と、故障時の連絡先も決めておきます。
指定工場やOBD確認を行う認証工場は、OBD検査システムの利用登録を行います。事業場登録と利用者登録を進め、実際に作業する担当者が所定の権限で利用できる状態にします。
利用開始後も、担当者の追加・異動・退職、端末の変更があれば登録情報を見直します。
ログイン認証方式などの運用変更もあるため、過去に作った手順書だけで判断せず、ポータルの最新案内を確認してください。
出典:NALTEC OBD検査ポータル、NALTEC OBD検査で使用する機器

特定DTC照会アプリで車両情報を受け付け、検査が必要かを確認します。
入力した車台番号や型式などが実車と一致しているかを照合してください。
車両を入れ替えたときは、アプリに表示された車台番号と現車を照合し、前の車両の受付情報で検査を進めないようにします。
検査用スキャンツールを接続し、アプリの手順に沿って検査します。
NALTECは、エンジン作動状態、ハイブリッド車・電気自動車等ではREADYの状態で行う必要があると案内しています。
一部の車両には、ドアを開くなどの操作によって原動機が停止する機能があります。
接続時に始動していたことだけで判断せず、検査を行う時点の車両状態を確認してください。車両の操作はメーカーの案内に従います。
不適合の場合は、表示内容を確認して故障診断・修理を行い、その後に再度OBD検査を実施します。
指定工場で修理を外注する場合は、国交省の判定フローに沿って外部委託できる作業かを確認し、作業後の状態を確認してから検査へ進みます。
DTCを消去する操作だけを、修理完了と扱わないことが重要です。
原因の確認、必要な修理、メーカーが指定する確認を行い、検査へ進む流れを設けます。追加の診断・修理が必要になった場合は、作業前に依頼者へ内容と費用・納期を説明します。
通信エラーや処理の未完了の場合は、判定が完了しているかを確認します。
エラー内容に応じてポータルの案内やサポート窓口へ確認し、「適合」の結果を確認できるまで検査済みとして処理しないでください。通信障害時の特例措置は後述します。
検査結果は、OBD検査結果参照システムで参照でき、帳票として出力する機能も案内されています。
車両、実施日、検査か確認か、判定結果を照合し、必要な記録へ反映します。
入庫一覧には「未実施」「適合」「修理・再確認が必要」などの状態を記録し、納車前に検査結果と照合します。これは工場内の進捗管理例です。

認証工場が持込検査前に行う「OBD確認」は任意です。
実施する工場は、検査用スキャンツールとOBD検査システムの利用登録を準備します。
一方、指定工場のOBD検査は、自動車検査員が行う完成検査の一部です。アプリで選ぶ実施モードと、実施する担当者を取り違えないようにします。
OBD確認で適合し、確認日を含めて5日以内に持込検査を受ける場合は、検査場でのOBD検査が原則として省略されます。受付担当者と実施担当者で、OBD確認日と持込予定日を共有してください。
例えば10月1日の持込検査では、9月27日以降の適合結果を使えるという例がNALTECから示されています。
省略されるのはOBD検査の部分で、車両の持込みやほかの検査は必要です。抜き取り検査等では、OBD検査も省略されない場合があります。
出典:国土交通省 OBD検査・OBD確認の違い、NALTEC OBD検査適用開始日前後の取扱いに関するQ&A

OBD検査に対応する際は、検査そのものに加え、不適合時の診断・修理をどう受け付けるかを決めます。「接続して結果を見る料金」と「原因を調べて修理する料金」を混同すると、追加作業の説明が難しくなります。
工場の料金表や見積書では、次の内容を整理してください。
| 説明する内容 | 受付時に伝えること |
|---|---|
| 検査の実施 | 対象車両か、車検の見積りにどの作業を含むか |
| 不適合時の対応 | 追加診断・修理は内容を説明し、承諾後に進めること |
| 日程への影響 | 部品手配や修理内容によって納車予定が変わる場合があること |
| 再検査等の費用 | 自社の料金規定で、どこまでを当初見積りに含めるか |
見積書では、法定費用と、工場が設定するOBD検査料・診断料・修理代を分けて示します。追加作業が必要になった場合の説明方法と、承諾を得る担当者も決めておきます。
機器の導入費は、本体だけでなく端末、通信、更新、教育なども含めて見積もります。補助金を利用する場合は、申請時点の公募要領で対象者・対象機器・購入時期の条件を確認します。
検査用機器としての認定と、補助対象機器への登録は別の確認です。

OBD検査はシステムと通信して行うため、通信や電源の障害によって予定どおり実施できない場合があります。担当者は、車両の異常、機器の接続不良、システムの障害を分けて確認します。
NALTECは、障害発生時の対応や特例措置に関する案内を公開しています。
障害時は、公式案内で特例措置の適用対象と必要な記録・手続きを確認します。自社の機器の接続不良だけを理由に、独自に検査を省略することはできません。
工場内では、状況を確認する担当者、公式情報の確認先、依頼者へ日程変更を説明する担当者を決めておきましょう。
障害対応の連絡先を検査端末以外でも確認できるようにしておくと、端末が使えない場合にも対応できます。

対象車でも、型式指定からの経過期間等によって、その時点では検査不要となる場合があります。
車検証の「OBD検査対象」という表示と、アプリによる今回の検査要否を分けて確認します。
警告灯の状態だけを理由に省略することはできません。
対象車両で検査が必要と判定された場合は、所定の方法で実施します。
検査用として認められた型式・構成かを確認する必要があります。
整備用として使用できることだけでは、OBD検査への対応は判断できません。
エーミングは修理内容やメーカーの整備要領に基づく調整作業です。
OBD検査の適合判定で、必要な調整作業を置き換えることはできません。
不適合の結果だけでは、原因や修理費は決まりません。
診断により原因を確認し、必要な修理内容と見積りを説明したうえで作業を進めます。

OBD検査への対応では、対象車の確認、機器・利用登録、規定の方法による検査、判定後の対応までを一続きの業務として準備します。
検査枠だけでなく、不適合時の診断・修理や、依頼者への説明時間も見込んでおくことが大切です。
車両情報、入庫状況、作業見積り、請求を担当者間で確認できるようにすると、検査の進捗と事務処理の食い違いを減らせます。
株式会社トランターは、顧客・車両・売上・入金などを管理する自動車整備システム「ドリームパワー」を取り扱っています。
OBD検査にはNALTECのシステムを使用し、 整備ソフトは周辺の業務管理に活用します。 業務管理ソフトを検討する方は、ドリームパワーの製品情報をご覧いただくか、 トランターへお問い合わせください。 |